全米不動産協会報告の要約
NAR(全米不動産協会)がこの度「住宅物件の購入者・売却者」という年次アンケートレポートを発表し
た。回答者中90%が売買するときにエージェントのサービスを利用しているという。2000 年後半に大不
況を経験し、この20 年間インターネットが人々の生活を大きく変革した状況の中で、この数値はエージ
ェントにとってグッドニュースだという他ない。ただエージェントの役割はこれまでとは次第に異なり、
今後も変わり続けることになりそうだ。
買手側で大不況の影響をもっとも受けたのはミレニアル世代(18−34 歳)である。大学卒業と就職が最悪
の景気に重なったため、経済的に未だに安定していないという実態が明らかになった。2015 年における
全購入者中初回購入者の割合は32%と過去30 年で最低を記録した。
購入者の平均年齢は44 歳、平均年収は$88,500 となっている。そのうち既婚夫婦が66%を占め、平均年
収は$99,200 であった。他の家族構成では女性だけの世帯が17%と男性だけの世帯の7%を大きく上回っ
た。女性だけの世帯の平均年収は$55,300 で男性世帯の$69,600 より大きく下回っているにもかかわらず、
住宅購入の割合は2倍以上という面白い統計が出ている。
2016 年において全購入者の92%がエージェントに交渉、書類手続きや物件を探すサービスをお願いして
いるようだ。事実インターネットやアプリだけでほとんど可能と思われた物件検索でも、50%の購入者
が未だにエージェントに依存していることが判明した。
エージェントの選択方法は口コミが42%でもっとも多い。購入者の88%は取引をサポートしてくれたエ
ージェントを周囲の人に推薦すると答えている。しかし過去に使ったエージェントを再び使う割合は
11%と低い。エージェントを選択する際、実際にエージェントに会ってインタビューするのはエージェ
ント一人だけという回答が多いこともわかった。
物件検索時の情報源ではインターネットが95%と他を圧倒している。そのほかにも面白い事実をあげる
● 最初に物件をネット検索する割合は44%。最初にエージェントにコンタクトする割合は17%。
● オンライン検索が有効と回答した割合は89%。エージェントからの情報が有効を回答した割合は79%。
● 家探しにかかる時間は平均10 週間(内覧物件数は10 件)と1987 年における7 週間より長くなっている。
● 家探しに時間がかかる理由はインターネットにより検索物件が増えたためだと見られている。ちなみにネット検索をしない購入者が購入に要する時間は4 週間(内覧物件数は4 件)とかなり短くなっている。
● 買手にとってもっとも重要な情報はやはり写真とリスティング掲載情報である。
● 購入に満足している人の割合は60%となっている。
次に売手のプロフィールを見てみよう。平均年齢は54 歳で年収は$100,700 となっている。売却までに住
む年数はほぼ10 年である。エクイティー(純資産=不動産価値―負債)は平均$43,100 で2015 年におけ
る$40,000 を超えた。購入価格からすると平均24%上昇している。これは所有期間が延びていることに
も由来している。
売却理由で多いのは
● 家が小さい(18%)
● 友人や家族に近いところが良い(15%)
● 転勤(14%)
となっている。
売手が周囲の人にエージェントを推薦すると回答した割合は85%に上っている。また3分の2の売手は
口コミか過去の取引からエージェントを選択している。売手の92%がMLS(物件情報サービス)を利用
している。
また買手と同様89%の売手がエージェントサービスを利用している。FSBO(売手自身で売却すること)
の割合は過去最低を記録した。
売手・買手両者にとってエージェントに求められる重要な資質は
● 誠実さ、正直さ
● 対応の良さ
● 専門知識(取引のプロセス)
● 専門知識(市場の理解)
● コミュニケーションスキル
などがトップに上がった。
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